なつ - ハク。
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人間同士の関係、とりわけ恋愛には、必ず駆け引きがある。まだお互いの本心を明かさず、押したり引いたり。そんな、まだはっきりしない心の機微を歌った『なつ』は、ハク。の曲の中でも特に好きな一曲だ。
「気にしない」と言ったそばから、「気にしたい」と歌う。
「あなたにはまだ見せない」と距離を取ったかと思えば、「あなたにももう見せたい」と踏み込んでいく。
恋心を半分以下に抑えようとしながら、一緒にレモンサワーを飲みたい。弱い自分を隠しておきたいのに、いつかは見せてみたい。近づきたいのに、まだ少しだけ離れていたい。
ただ、この曲が面白いのは、歌詞に登場する「レモンサワー」や「AM4:00」といった言葉が、恋愛を象徴するための抽象的な小道具としてではなく、その年代の生活にある具体的な時間や風景として置かれていることだ。そこに、恋愛ソングにありがちな大げさなドラマはない。
あるのは、夏の夜の生活。
そして、その生活感をそのまま身体へ引き込んでいくのが、何よりも気持ちいいドラム。
『なつ』の最大の魅力は、何よりもそのリズムにある。
今の音楽は、短い時間のなかで次々と刺激を提示していくものが主流になっている。ボカロやショート動画をはじめ、デジタルネイティブ世代が親しんできた音楽には、冒頭から強いフックを置き、展開を切り替えながら、聴き手の注意をつなぎ止めていく構造も多い。
けれど、ハク。の音楽は、そこに必ずしも乗らない。
『なつ』は、何かが次々と起こることで聴かせる曲ではない。同じグルーヴに身を委ね、そのリズムに身体を預けながら、そのなかで少しずつ感情が揺れていく。
歌詞のなかで、気持ちは何度も揺れ動くのに、その下ではドラムが揺るがないグルーヴを刻み続けている。
この対比が、『なつ』をただの夏の恋愛ソングにしない。揺れる感情を、揺るがないリズムが受け止めているからこそ、その迷いさえも心地よく聴こえてくる。
この曲が描いているのは、思い出になる前の夏だ。まだ終わっていないから、気持ちは揺れ、まだ関係が決まっていないから、近づいたり離れたりする。そして、その決まらなさこそが、この瞬間にしかない。
デジタルネイティブ世代の感性を持ちながら、生楽器が生み出すフィジカルな熱量を手放さない。速い刺激に寄りかかることも、過去のバンドサウンドに閉じこもることもない。そのあいだを揺れながら、自分たちの場所をつくっている。
だから、ハク。の音楽は、今の時代にあって特異なのだと思う。
歌詞だけでは伝えきれない揺れまで、身をもって感じさせてくれる。そんな身体性が、この曲には宿っている。
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