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初めて自発的に聞いた音楽はB'z。
そのサウンド、メロディ、そして詩世界は、何十年経っても色褪せず、記憶の中に刻まれている。
Background Movie:兵、走る
全校生徒が10人ちょっとほどしかいないような田舎には、新しい音楽を知る機会はラジオ番組しかなかった。
三歳年上の兄と、まだ小学校低学年のうちから当時流行していた最新曲を一緒になって聞いていた。
当時、最も流行っていたのが、B'zの『太陽のKomachi Angel』である。
何度も何度もラジオから流れていたその曲を、なんとなく知っているからという理由で、兄が買ったんだったと思う。
お小遣いを貯めたお金でCDシングルを1枚買って何度も聞く。
最初はその程度のとっかかりだった。
それから、数年後小学校高学年にもなると今度は自分のお小遣いで、CDを買うことになる。
それが、あの『IN THE LIFE』というアルバムだ。
その頃のB'zはもうトップアーティストとなり、出す曲出す曲がオリコン1位を獲得するような状況。
情報も限られている中、自然と誰もが手にすることになる。
当時の一番ポピュラーな音楽に触れ、ごく自然に聞くようになる。とっかかりはそんなものだ。
しかし、このアルバムの完成度がその後の音楽ライフを決定づけたと言ってもいい。
『Wonderful Opportunity』から始まり、『ALONE』で終わる全10曲は捨て曲の一切ない完璧な内容で、
今ほど娯楽も少ない当時、繰り返し繰り返し聞きなおした。
まわりの友達も同じように聞いていて、学校の話題といえばスラムダンクか、ストIIか...そしてB'zだった。
まわりに流されるようにして、はまっていったある日、ラジオで流れた新曲に心を奪われる。
それが11枚目のシングル『ZERO』という曲だ。
一瞬にしてB'zとわかるサウンドとボーカルが耳に残った。
不穏な雰囲気すらまとうシンセ音と、ヘビーなリフが重なるようにして始まるイントロから、
ミディアムテンポのAメロ・Bメロが2度繰り返される。
そこから一気に転調し、解放されたように展開される驚速のサビ。今聞いても全く古さを感じさせない。
通算11枚目のシングルとして発表された楽曲。当時としては珍しいラップも披露された。
この時代としては、まだ珍しかったラップが曲間に挟まれていて、歌詞カードに記載がなかったため
一体何を歌っているのかと、学校で話題となったほどだった。
まわりの友達を含め、どっぷりとB'zにはまると、新曲リリースをいかに早いタイミングでキャッチできるか競うようになった。
さらにはファンとなる以前の過去の作品も漁りだすようになる。
当時、B'zの曲で知らない曲はなかった。
B'zファンにとって有名なのが、シングルのカップリング曲(2nd beat)には名曲が多いということ。
恋心、Pleasure'91、TIME、SAFETY LOVE、JOY、hole in my heart、YOU&I...などなど挙げればキリがない。
そんな中でも、好きな曲のひとつが『GUITAR KIDS RHAPSODY』という曲。
ギター少年の夢を歌うような歌詞は、作詞は稲葉さんだが、相方松本さんを思い書いたような内容だ。
この曲に特にお気に入りの一節がある。
ギターという譲れないものがあったからこそ、自分の意志で歩み、夢を実現させようとする姿が歌われている。
THE HIGH-LOWSの不死身のエレキマンに通ずるものがある。
大人になるにつれ、いろんな責任がのしかかってくると、自由がなくなっていくかのように思うが
何か守るもの、その責任感があるからこそ自由な意志を持てる。
何も持たず、何にも縛られていないことは決して自由なんかじゃない。
ふとした時に思い出す一節である。
ところで、「RED Chair」というネットのインタビュー番組をご存知だろうか。
様々な業界のトップランナーの素顔に迫るインタビューを聞くことができる企画で、
そこに稲葉浩志氏のインタビューがあり、非常に興味深い内容になっている。
B'zのこれまでの歩み、そして稲葉さんの人間性について垣間見ることができる。
B'zの楽曲の詩世界は、その圧倒的なパフォーマンスやロックサウンドから想像されるものとは、少しギャップがある。
繊細であり、意外とネガティブな歌詞が多い。
歌唱力、作詞の才能、表現力、ルックス、スタイル...あらゆる能力を兼ね揃えたスーパースター稲葉浩志。
しかしその人間性は思慮深く、決して驕らず謙虚。
そこに、GUITAR KIDS RHAPSODYでも描かれたような強い意志とビジョンと、
圧倒的ギターテクニックをもった松本孝弘が融合することで生まれたスーパーユニットがB'z。
この二人から生み出される楽曲の数々は、完成度の高いロックナンバーでありながら、
人間味に溢れ、誰にでも共感できるものばかりである。
ここからは個人的に好きな楽曲ベスト10を中心に紹介したい。
正直なところ10曲に絞るのは無理があるほど、まだまだ名曲揃いではあるが...
10曲に絞った中でも、不動なのがベスト3の3曲。
まずは、ファンの間でも名曲として名高い『Brotherhood』。
No.3
仲間との本物の絆とは何かを歌い上げる名曲。何十年とトップを走り続ける彼らが歌うからこそ意味がある。
この曲を聞くといつも、高校時代よく遊んだ仲間のことが思い浮かぶ。
大学、社会人とバラバラの道を歩むことになった彼ら。自分も含めみないろんな困難に立ち向かっているだろう。
今は年に数回会えばいいところ一一も、帰る場所はそこにある。
次は一転変わって、惚れた女性に振り回される男の姿を描いた『GIMME YOUR LOVE -不屈のLOVE DRIVER-』。
No.2
いわゆる"アッシー"の一人の苦悩を描いた楽曲。物語性のある歌詞が、ミディアムテンポの曲調に乗り展開されていく。
小学生ながら、その悲哀を噛み締めながら聞いていた記憶。大人になるとより一層沁みる。
この物語のその先が気になってしょうがない。
大好きな一曲である。
そして不動の1位が、ある男女の再会の1シーンを歌った『Warp』。
とにかくそのディテールの積み上げ方と、心情の描写が素晴らしい。
3年間、離れ離れになった男女。
離れていた時間で変わったものもあるけど、変わらないものにひとつひとつ気づいていく。
笑えるポイント、シャツの色、香り、その一声...。
そしてひとつ忘れていたもの、それは感謝の気持ち。それを伝える物語。
核心に迫らず、念入りに張り巡らされた伏線が、最後の一言で回収され、とてつもない感動へと繋がる。
稲葉浩志の天才的な詩世界を味わえる珠玉の一曲だ。
最も感受性に溢れた時期に出会い、感動を与えてくれたアーティストB'z。
その記憶は今も消えることはない。
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