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THA BLUE
HERB

一人の人間の生き様が、一字一句無駄のない削り込まれた言葉によって提示される。
ブルーハーブの音楽は、人生の支えであり指針でもある。

Text:master

Background Movie:PHASE 3

Trigger【きっかけ】

最初の衝撃

「THA BLUE HERB」
なんとなく認識はしていたが、進んで聞くようなことがなかったアーティスト。
しかし、今では自分の人生においてなくてはならない存在になっている。

初めの衝撃は突然やってきた。

初代iPodが発売されて2、3年が経ち、より軽量化しだしていた頃、
会社の先輩が手持ちのiPodを買い替えるため、古い機種を格安で譲ってくれた。
そこには、その先輩が録りためていた曲がそのまま入っており、消去されることなく聞くことができた。

その時、偶然流れてきたのが、『孤墳』という曲である。
今でもその時の衝撃を覚えている。

孤墳

当時の東京一曲集中のHIP HOP界へのフラストレーションをポエトリーディングの形でぶちまけた楽曲。

ざらついた雑踏の音にのせ、BOSSの怒りにも似た感情がぶつけられていく。
自分の知るHIP HOPとはまるで違う。一体この曲はなんなんだ。

感情は全く処理できないのに、伝えたいメッセージだけはひしひしと伝わってくる。
この瞬間から、自分にとってのブルーハーブは唯一無二のものとなった。
ぜひ一度聞いてみてほしい。

Memories【記憶】

2度目の衝撃

改めてiPodに入っている曲を確認すると、ありがたいことに、アルバムが数枚入っている。
「STILLING, STILL DREAMING」「SELL OUR SOUL」「FRONT ACT CD」など初期のアルバムがすべてある。
のめり込むように聞き入った。

それまでの自分の中のHIP HOPといえば、
ブッダブランドや、NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDといったアーティストがスタンダードだった。
もちろん今でも好きなアーティストだが、ブルーハーブはそのどれとも違った。

一人のMCと、一人のDJ、そして一人のプロデューサー。
絞り込まれたメンバー構成で、ライミングやフロウのテクニックには頼らない。
まさに言葉と音のみで、勝負を仕掛ける。

そんな彼らのストイックさを最も感じることができる映像に巡り合う。
それが、2度目の衝撃である。

FUJIROCK 2000に出演した時の映像がYoutube上にあったのだ。

ILL-BEATNIK

当時まだそれほど知られていなかった彼らが、ホワイトステージの舞台に立ち、圧巻のパフォーマンスを披露する。今なお語り継がれる伝説のステージ。

夏フェスが日本中に浸透しはじめた頃、まだHIP HOPのアーティストがそういった舞台に立つことは少なかった。

当時、それほどメジャーではなかったブルーハーブが、そのステージ上のパフォーマンスひとつで、音楽ファンの度肝を抜く。
今見返してみても、圧巻の一言。
まだ攻撃的なスタイルで、魂の飢えからくるような渇望を曝け出している。
Tシャツに短パン、ハット。そのスタイルもたまらなくかっこいい。

折に触れ何度も見返している映像のひとつである。

BOSSの発することば

当然、FUJIROCKのようなステージだけでなく、深夜の狭く暗いライブハウスにもブルーハーブはやってくる。

普通アーティストの作品は、音源。
しかし、ライブのMCひとつとっても、BOSSの発する言葉には、もはや作品と変わらない力がある。
それを聞くために、みなライブハウスに足を運ぶ。

また、DVD作品にはインタビューが多数収録されていて、ここでもそのことばを聞くことができる。

HIP HOPの世界で、地方から東京一極集中のシーンに中指を立てるように攻撃を仕掛けると
業界からは当然、異端として扱われる。

だが、大自然のフェスの舞台に立った時感じることは、ヒップホップマナーの狭い世界で胡座をかくことの小ささであり、
野外ステージで、大自然とオーディエンスに囲まれた時、そこで一体何を歌うのか——
それは、自分達をむやみに誇示することではなく、生まれて死ぬまでのそのすべてなんだと。人の生き死になんだと。

音楽は衣食住の次 暮らしが成り立たなかったら真っ先にクビ 我々色々と試されまくり さあどうする なら曲を創ろうすぐ
2020

コロナ禍まっ只中の2020年にリリースされた一曲にこんな一節がある。

人が生きていく上で、音楽は必ずしも必要ではないのかもしれない。
でも、一人の人間の生き様を、削り込んだ言葉で提示し続ける姿には、自然と心が動かされる。

人生の支えには、ブルーハーブの音楽がある。

Ranking【厳選曲】

これまで発表されたアルバムにはひとつひとつテーマのようなものがある。

乾いた思いをぶちまけた一枚目と
心の内側を掘り下げた二枚目と
人生を讃えた三枚目の延長
依然深いままの致命傷 3.11後の列島
We Can...

1枚目では東京HIP HOPシーンへの怒りをぶちまけ、2枚目では世界中を旅し心の内側を深く掘り下げ、
3枚目では人生について歌い、4枚目では3.11後の感情を吐き出す。そして5枚目で自分達自身を再定義する。

曲の一節にもあるように、それぞれにテーマ性があるため単純に曲同士を比較するのは難しい。

それでもあえて、ランキング形式に落とし込んでみた。

名曲ベスト10

ここでは厳選した上位3曲を紹介したい。

 

まずは一曲目の『ROADS OF THE UNDERGROUND』。
静かなイントロから、淡々と語りかける口調でライブ終演後の様々な感情が吐き出されていく。

No.3

ROADS OF THE UNDERGROUND

ライブの最後を飾り、その終演後の静けさまで歌った曲。アンダーグランドで戦い続ける孤独を感じさせる。

さらに詳しく

マイクリレー、ハードコア、パーティーチューン、ハスラーラップなどHIP HOPには様々なスタイルがあるが
この淡々と感情をさらけ出すスタイルこそ一番心に刺さる。

 

2曲目は『THE WAY HOPE GOES』。
希望の果てと題されたこの楽曲は、ブルーハーブの心臓部を垣間見ることができる。

No.2

THE WAY HOPE GOES

過去の成功に溺れず、希望の果てへと自らを進ませる。ストイックなまでの挑戦者の矜持を感じさせる楽曲。

これまで手にした数々の成功や栄光に決して自惚れることなく、再び挑戦へと駆り立てる。
行く手を阻むものはすべて捨て去り、我が道をいくんだと。

時を腐らせず太く巻き灰に変えて 頂上からの景色を登山口に変えて 驚きをライムに 金を機材に変えて うぬぼれは置き去りに これで我らと我らの希望の行く手を阻むものは何も無し
THE WAY HOPE GOES

果たして自分にもこんなことができるのだろうか。自問自答せずにはいられない。

 

そして数ある楽曲の中でも、不動の1位はやはり『未来は俺等の手の中』しかない。
ここでは、ブルーハーブの実体験が綴られていて、その原点が詰まっている。

No.1

未来は俺等の手の中

何も変わらない日常、成功なんて程遠い現状から脱却していくブルーハーブの物語。

何も変わらない日常、自らの惨めな姿を曝け出し、成功なんて程遠い現状から脱却していく物語。
退路を断ち挑み続け、少しずつ舞台は大きくなっていった先、
未来は彼等の手の中にあった。

 

テクノロジーがいかに進歩しようと、文字や言葉が失われることはなく、紙と鉛筆があればそれを残すことができる。
人間の生まれて死ぬまでの一生を、自分のことばで発し続けるブルーハーブの姿を見ることは
単なる音楽鑑賞にとどまるところではない。

Text by master

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