20200918

快楽の園 - ヒエロニムス・ボス

「モナリザ」に代表されるルネサンス中期の、いわゆる遠近法などの絵画的手法が完成された時代、この奇想天外な「快楽の園」を描いたボスはあまりにも独創的な作品を残している。あまりに奇妙な世界観を構築していたため、異教徒であったとされる見方もあるが、実は熱心なカトリック信者であったと言われる。

左右に2つ、中央に1つの絵画が連なる三連祭壇画で、左側のパネルは、楽園、中央は現世、右側のパネルは地獄の世界が描かれている。1503年〜1504年の作品であるが、まるで現代のゲームに見られるような前衛的な世界観だ。とても今から500年以上前の作品とは思えない。シュルレアリスムのルーツと言われても不思議ではない。

左側の楽園には、神、そしてアダムとイブのみが人型の姿として描かれ、それ以外は動物達が優雅に過ごすのみの落ち着いた世界。しかし左パネルの楽園から地続きで描かれる中央の絵には、全裸となり欲望のままに動き回る人間達が無数に描かれている。そして右側の絵に移ると、一点、暗闇の中、押しつぶされ、張り付けられるなど目を背けたくなるような拷問シーンが多数描かれる。

左から順に、神によって創造された天地、そこから徐々に人間が快楽に溺れ乱れていく姿、そして最後に行き着く先は地獄。堕落していく愚かな人間を、無数のメタファーによって警告するかのような構成である。

また他の宗教画と圧倒的に違うのが、甲殻類から着想を得たようなピンク色の奇妙な造形物。一体これは何なのか。まるで「PLの塔」のような建築物まである。中央の絵には、所々真っ赤な果実が配置され視線を誘うが、それはまるで神との契約を破った愚かな人々を風刺しているかのうようである。

独特の世界観で自由に描かれているようで、計算され尽くした配色と構図。ただただ不安にさせるだけではなく、落ち着いてその細部に見入ることができる。もっともっと細部にまで見入ってみたいものだ。鑑賞を続ければ続けるほど新たな発見があるのは言うまでもない。

Text by master

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