黄道十二宮 - アルフォンス・ミュシャ
リトグラフ工房シャンプノワ社のノベルティカレンダーとして制作されたとされる「黄道十二宮」。ノベルティカレンダーが後世ここまで評価されたのは、ひとえにこの絵の美しさからなのだろう。
生活の芸術化ともよばれるアール・ヌーヴォーを体現するかのような曲線美が象徴的。カレンダーということもあり、「時」を表すモチーフが随所に散りばめられている。輪郭を太く描き、塗りと線が見事に強弱をつけ、これだけの無数の要素を用いても、ひとつの作品に仕立て上げている。精密に書き込まれた図柄に、ほんの少しかぶさる有機的な月桂樹や髪がリーディングラインとなり主役へと誘う構図も美しい。
グラデーションや遠近法のない平坦な絵にあって、何重にも重なったレイヤーが巧みに相互作用を起こし、さらにはまるでベジェ曲線によって作られたデジタル作品のような完璧さ。数学的にも、この世の真実を表しているかのごとく感じとれる。
COMMENT
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- master
お気づきでしょうか、この黄道十二宮の「蟹座」、ロブスターなんですよ……!!
というどうでもいい視点は置いておいて、誰もがこの絵に恋をする、みたいな絵ですよね、これ。好きにならずにいられない(SAS)みたいな。平坦なはずなのに奥行きを感じさせるものの配置と、髪の毛の曲線に、研ぎ澄まされた色気を感じます。