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20250623
あいっ! - ハク。
どこかの誰かがつけた「Z世代」ということば。その肩書きを与えられた側からすれば、余計なお世話かもしれないが、私たちはしばしば、あるひとつの世代をひとまとめにし、ラベルを貼りたがる。
有識者の言によれば、そんなZ世代には「明日がどうなるかわからない」という不安を根底に抱えている傾向があるという。
絶え間なく流れ込む情報の洪水や、めざましく進化し続ける技術によって、昨日の当たり前が、今日にはあっけなく塗り替えられる。
また、コロナ禍というそれまでの世界を一変させるような異常事態を、多感な時期に経験したことは、彼らの価値観を静かに、しかし確実に揺さぶった。
社会が成熟し、多様性ということばが日常の語彙になったいま、かつてのような一様な価値観は崩れはじめ、誰もが「自分らしさ」を口にするようになった。それはもちろん、これまで日の当たらなかった人々にも光が差し込む、歓迎すべき変化でもある。
けれど同時に、日本人の内に深く根づく「和を大切にする」という精神――集団を重んじ、空気を読むことで調和を保ってきたその価値観と、個を尊重し、自分のままでいることを是とする新しい感覚とのあいだで、心は少しずつ、引き裂かれていったのかもしれない。
Z世代のもうひとつの特徴とされる"自己肯定感の低さ"は、時代のうねりそのものが生み出した感情なのだとも言えるだろう。
「LOVE」でも「愛」でもなく、「あいっ!」。
どこの国の子どもにも伝わりそうな、不思議な明るさをたたえたことばが繰り返されるこの曲は、赤ちゃん向け番組「シナぷしゅ」のテーマソングとして生まれた。
イントロの響きは、まるで春先の風がカーテンを揺らすような軽やかさ。
親しみやすく、けれど一筋縄ではいかないリズムが、どこかで聴いたことがあるような安心感と、はじめて出会った言葉のような新鮮さを同時に運んでくる。
そして不意に、転調が訪れる。その瞬間、空気ががらりと変わる。まるで、窓を開け放ったあとの、あの「違う世界があるかもしれない」と思わせる匂いのように。
歌っているのはハク。
ありきたりなことばで表現するならば、「Z世代のガールズバンド」。たしかに世代の空気をまとってはいるけれど、そんなステレオタイプの枠組みを、軽々と飛び越えてしまうような、不思議な個性をもったバンドだ。
何気なく繰り返される「あいっ!」という掛け声は、語感の心地よさとともに、どこか自信を持ちきれない感覚をやわらかく、ユーモアと温かさで包みこんでくれる。
明日がどうなるかなんて、わからない。
自分が何者かも、まだよくわからない。
それでも、こんなふうに声をかけ合って、笑い合えたなら――ほんの少しだけ、この世界は平らになっていくのかもしれない。
歌詞の言葉たちは、どれも短く、軽く、ふわりとしていて、それでいて地面に足がついている。そのバランス感覚は、まさに現代の若者たちが生きる感覚と重なる。
ことばをただの記号ではなく、温度をもった存在として響かせる力が、このバンドにはある。









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