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20201117
月と甲羅 - GO!GO!7188
日本古来、平安時代末期から鎌倉時代にかけて100人の歌人の和歌を集めたとされる小倉百人一首。その中に、「月」を詠んだ句は12句存在する。薄暗い夜空に光る月は、当時の人々に様々な想いを掻き立たせたことだろう。
「ウサギと亀」、つまり「月と甲羅」。この比喩が、日本伝統の和歌を彷彿とさせる。また、ミディアムテンポのヘビーなサウンドに乗るボーカル・ユウの歌声は、どこか民謡を思わせ、歌詞の世界観に見事にマッチする。まるで、和歌を詠む歌人のようだ。
届きそうで届かない想いを、いくつかの対比で進行させるまさに百人一首の句のような構成が美しく切ない。
邪魔なモノ。涙と嘘、都会時間と眼鏡曇らす昨夜の吐息
好きになれたモノ。ベースと夜、サッカー中継と昨夜の電話
いくつか共有できたものはあれど、届かない距離を思わす時間...あたしと君、その間はずっと埋まらない。
ウサギだけど、さぼらず眠らず距離を埋めるために走る。でもそもそも、ウサギと亀の歩幅は違う...そんな切ない連想がつきまとう。
しかし、最後の締めがどうにも美しい。七色に輝くはずの虹の青色が欠けていたなら、青い傘をさせばいい。足りないものも、うまくいかない現実もそれを補うちょっとしたアイデアさえあればうまくいく。そんなメッセージが心に沁み入る。
「歌謡ロック」と呼ばれる彼女らの、詞の世界観、メロディ、そしてユウのボーカルの魅力すべてが完璧に詰まった名曲中の名曲である。
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