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20250417
In the dark - ハンバートハンバート
美しいメロディと歌声で知られる夫婦デュオ、ハンバートハンバートは、『カーニバルの夢』という夢をテーマにしたアルバムをリリースしている。
その中でも、とくに心に残るのが『In the dark』という一曲だ。
各小節ごとに、聴く人の解像度をじわじわと上げていくようなフレーズが配置されていることに気づく。
「君の朝は ぼくの夜中」という一節で、すれ違う二人の関係性がぼんやり浮かび上がる。
続く「体ももう 薄くなって」という一行が、静かにリスナーを曲の世界へと引き込んでいく。薄くなった体は、まるで眠るあなたのそばに立つ幽霊のようだ。
触れられないけれど、確かにそこに"いる"誰か。その存在を想像させた直後、「君の夢を 訪ねてみた」という言葉で、感情はさらに深く引き込まれていく。
曲の世界観にどっぷりと浸り、緊張感が高まったその先で、「届けよ 眠る君のもとへ」というフレーズが訪れ、張りつめた感情が一気にほどけてゆく。
緊張感と優しさが同居するような、極めて繊細なバランスのうえに、この曲は成り立っている。
人間がなぜ夢を見るのかは、いまだ科学的に明確な答えが出ていない。だからこそ、夢は心理学の研究対象となり、芸術においても繰り返しテーマにされてきた。
「夢」と聞いて真っ先に連想したのが、あの天才ピカソに多大な影響を与えたとも言われるアンリ・ルソー。彼は、夢を題材とした作品をいくつか残しており、その中のひとつ「眠るジプシー女」という絵が特に印象に残っている。
そこには、月明かりの下、砂漠に眠る一人の女性と、そばに静かにたたずむ一頭のライオンが描かれている。背景には、乾いた大地と果てしなく連なる山々が広がっている。眠る女性の隣にいるライオンは、本来は捕食者であるはずなのに、なぜか彼女を守っているようにも見える。
この曲に流れる空気のようなものが、アンリ・ルソーの「眠るジプシー女」をふと思い出させた。
社会的な関係性は存在せず、交わることのない二人の世界。
ハンバートハンバートは、これまでも多くの名曲を届けてきた。けれど、このような"ほの暗い夢"を、夫婦というかたちで表現する。そのギャップに、つい引き込まれてしまう。









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