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20260313
舐達麻っぽく岸田首相を歌ってみた - はやぶさチャンネル
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日本の政治家の言葉には、独特のレトリックがある。
何かを言っているようで、決定的なことは言わない。意思を示しているようで、具体的な変化は約束しない。「〜を視野に検討する」「検討を加速する」「誠に遺憾である」。政治の世界には、そうした曖昧な表現が数多く存在する。国際関係や利害関係の調整を考えれば、それが必要な技術であることも理解できる。
しかし同時に、どこか煮え切らないモヤモヤが残るのも事実だろう。
そうした政治家の言葉を象徴していた人物の一人が、当時の首相である岸田文雄氏だった。
岸田首相は「聞く力」を掲げ、庶民の声に寄り添う姿勢を前面に出していた。多くの政策について「検討」を重ね、様々な課題を視野に入れながら判断を進めていく。その姿は、ある意味で非常に政治家らしい政治家だった。慎重で、調整型で、そして決して言い過ぎない。
たかだか増税ガタガタ抜かすな
これは舐達麻の有名なパンチライン「たかだか大麻ガタガタ抜かすな」を踏まえたオマージュである。言葉の置き換えとしてはわずかな違いに過ぎないのに、岸田首相を見事にレペゼンする。
もちろん、実際の岸田首相がそんな言葉を口にするはずはない。それでも、むしろ「もし本音を言うなら、こうなるのではないか」とさえ思わせるリアリティがある。
政治家の建前が、舐達麻というフィルターを通すことで、見事に裏返される。
長く政治家の曖昧な言葉を聞き続けてきた側からすると、この一節は一種のカタルシスだ。もやもやとした感覚を、たった一つのパンチラインが吹き飛ばしてしまう。
なんならこれぐらい言い放ってくれた方が却ってすっきりするほどだ。
さらに言えば、この曲の魅力はその一行にとどまらない。核となるパンチラインを際立たせるように、岸田首相の政治スタイルを思わせる秀逸なフレーズが随所に散りばめられている。
こうして自由に政治を風刺できること自体、実はそれほど当たり前のことではない。歴史を振り返れば、権力や社会を批評する言葉は長いあいだ制限されてきた。そうした積み重ねの先に、いまの言論の自由がある。
例えば江戸時代には、出版人の蔦屋重三郎が、浮世絵師・写楽の作品を世に送り出した。
写楽の役者絵は、人物の表情や癖を大胆に誇張し、従来の美化された肖像とは違う強烈な個性を描き出した。何らかのフィルターを通して人物像を描き直すことで、社会の空気に揺さぶりをかける表現が生まれることは、時代を超えて繰り返されてきたのかもしれない。
そう思うと、この曲がこうして自由に世に出ていること自体、言論の自由を求めて戦ってきた先人たちの歴史の延長線上にあると言ってもいい。
加えて言えば、短文で簡単に、しかも乱暴に発信できてしまう時代にあって、単なるネタを超えた作品性を感じずにはいられない。HIP HOPのスタイルを理解し、舐達麻というアーティストへのリスペクトを前提にした上で、政治という題材を一つのラップ作品にまで仕立てているからだ。
ある種ネタ動画のような形で配信されたこの曲に対して、あえて大真面目に語ることこそ、作者への最大限のリスペクトである...と思いたい。









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