-
play_arrow
20210607
走れ!with ヤマサキセイヤ(キュウソネコカミ) - POLYSICS
人間の体内を舞台に、細胞たちを擬人化したアニメ、「はたらく細胞 BLACK」のオープニングテーマでもある「走れ!」は、まさに時代にマッチした楽曲である。数々の我慢を強いられる世の中で、とにかくポジティブに前向きに奮闘する姿を歌い上げる。
「はたらく細胞 BLACK」は、過酷な体内環境をブラック企業に見立て、その中で働く細胞・赤血球が主人公のアニメである。
歌詞の構成に目を向けると、「~って」や「~しないで」が脚韻となり、リズムを生み出しているのが分かる。そこにツインボーカルが入れ替わることによって、転調を生み出し単調なリズムに深みをもたせる。出し尽くされた感のあるパンクサウンドでも、まだまだ引き出しはたくさん存在するんだと思い知らされる。
...2021年現在、いまだ新型コロナウイルスによる世界中の混乱は収束が見えないが、その影響は様々なアウトプットにも作用している。思えば、音楽も美術もアートもその時代時代とともに生み出されてきた。芸術作品はその時代を写す鏡のようなものでもある。
しかし、ただただ時流にぴったりマッチしていることだけがこの曲の魅力ではない。王道とも言えるほどストレートで前向きな歌詞は、人物像を省き、場所や季節も描かず、比喩もなく、具体性を極力省くことで、実は時代を超越する普遍性がある。きっと何年後に聞いても、変わらない力があることだろう。
夏フェスなんかが普通に開催できるようになったとき、この曲で大盛りあがりを見せるシーンが容易に目に浮かぶ。時代の特殊性と、普遍性という相反する2つの特徴を合わせもつ一曲である。
COMMENT