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20250304
スーパーレア - P丸様。
社会人になりたての若者の気持ちを、社会に渦巻く空気や世相を通じて見事に代弁した、共感度の高い楽曲『スーパーレア』。
例えば、ユニコーンの名曲『大迷惑』や『働く男』のように、社会人のストレスをテーマにした楽曲は数多く存在するが、現代のコンプライアンスや価値観に照らし合わせると、それらのストーリーは今の時代とはズレが生じている。
かつて、少年漫画の三大要素は「努力・友情・勝利」だった。しかし、テクノロジーの進化や効率化、AIの発展などにより、その価値観は大きく揺らいでいる。
転生ものが一過性のブームで終わらず、広く定着したのも、現代社会の変化や人々の価値観の変容が影響しているのかもしれない。「ボロボロになるまで努力するのは馬鹿らしい」「努力・友情・勝利」よりも、「チート級の能力を一瞬で得られる転生もののほうが魅力的」と感じるのも、一理ある。
しかし、現実の物語はそう甘くはない。
多くの人が、日々のプレッシャーを感じながら、退屈な日常や自分の平凡さに半ば諦めを抱き、無感情のままスマホ片手に毎日を過ごしている。
それでも、誰だって自分の人生という物語では主人公であり、そしてヒーローでありたい。
『スーパーレア』は、そんな気持ちを映し出す。
ルーティンのように朝、寝ぼけまなこで起動するスマホゲーム。それが、いつの間にか自分の日常と混ざり合い、まるでゲームの主人公と一体化していくところから物語が始まる。
ロシアの民話研究者・プロップの物語論によれば、物語には「七つの役割」が存在するという。
この曲では、主人公=自分、悪者=困難、援助者=スーパーレアの武器、贈与者=ログインボーナス、そして──「派遣者」は、前を向いている"あなた"。
この3分半の楽曲の中で、そんな物語の役割が自然と配置されている。
さらに巧みなのは、主人公の視線の向きによって、感情の起伏が描かれ物語が進行していくこと。
会社に向かう朝、前を向くが、「スーパーレア」なんて出るはずもなく、ろくな武器も持たない私は、ふと下を向く。ボスキャラのような困難に立ち向かおうとするが、怯んで後ろを振り返ると、やたらと前向きな"あなた"と目が合ってしまう。
なんでもないミスをする雑魚キャラには、妙に大きな態度で接してしまう。でも、少し休んで、また前を向き、少しずつ歩き出す。
やがて、主人公は気づく。スーパーレアが出ないなら、自分で"S"をつけ加えればいい。ログインボーナスのように、小さな経験値を積み重ねながら、今日もまたひとつ成長していく。そうして前を向けば、「派遣者」である"あなた"と肩を並べ、同じ目線で会話できるようになる。
最強の武器が出なくても、毎日コツコツとログインボーナスを貯め、経験値を積み、少しずつレベルアップしていけばいい。たとえチート級の能力を手に入れられる転生が叶わなくても、毎日一歩一歩進んでいけばいい。
そんなふうに背中をそっと押してくれる物語が、『スーパーレア』には息づいている。どんなに冴えない毎日でも、僕たちは「物語の主人公」でありたいと願っている。そんな小さな誇りを、そっと肯定してくれる。









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