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20231210

トイレの神様 - 植村花菜

植村花菜さんの超個人的な実体験をもとに生み出された『トイレの神様』は、大ヒットした当時から、折に触れ聞き直してしまう不思議な魅力を持っていた。ストレートに聞き入るなら、思わず涙を流してしまう感動の名曲と言ってもいい。

しかし、賛否両論、この曲へ寄せられる意見はさまざま。
主人公の身勝手さ、トイレ掃除を強要するための方便、子供の日記のような歌詞...などなど批判的な意見も目立つ。それだけ日本人の頭に、ひとつの家族像をくっきり浮かび上がらせる力が備わっているんだろう。

本人も口にされている通り、「新喜劇」「鴨なんば」「五目並べ」などの固有名詞が、聞く人それぞれの記憶を刺激しイメージを膨らませる。そうして大きくなった感情は、おあばあちゃんが亡くなるというクライマックスによってはじける。

歌詞の展開に合わせて、歌声にも感情がこめられていく様は、感動をよぶための公式と呼んで差し支えない。

しかし、具体的だからこその弊害なのか、散りばめられたディテールには違和感を覚えてしまう人が多いのではないだろうか。

なぜ、小3のこどもが実家からおばあちゃんの家にひとり預けられているのか?
おばあちゃんは本当にトイレに女神がいると信じて言っているのか?
新喜劇を撮り忘れたぐらいで、そんなに責める?
本当に病室でおばあちゃんは私を待ってくれていた?
・・・

話は飛んでしまうが、インターネットが普及し、SNSというツールを手にした現代、今までなら知ることができなかったさまざまな事象を、目にすることができるようになった。

いろんな現場での不祥事や、今までなら隠されてきた行為、抹殺されてきた叫びなど、あらゆるものは可視化されるようになった。ひとつの告発が巨大な帝国をも崩壊させてしまうほどの力になることだってある。

でもまだ十分に可視化されていない聖域がある。それが、家族という小さな社会。

社会の最小単位である家族にも歴史が存在する。
そして、世界の各国に歴史があるのと同じで、家庭内のコミニケーションにのみ伝わる神話と呼べるものがある。そのひとつが『トイレの神様』なんだと思う。

当然、各家庭によって信じる教えは違うため、共感することもあれば拒絶してしまうこともある。もしこの曲に嫌悪の感情を抱くとしたら、正体はそれなんじゃないかと思う。

家族内にのみ存在する神話を綴った"聖書"と呼んでもいい楽曲は、図らずとも、ある家庭の光と闇を映し出し、それゆえに、感動と嫌悪という両極端の感情を生み出してしまう。

そしてまた、自分の感情はどうなのかを確かめため、1ページ目を開くように、この曲を聴き始めてしまう。

Text by master

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master

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