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20220108
車も電話もないけれど - ユニコーン
数あるユニコーンの名曲の中でも、ファンの間で人気の高い曲として知られる「車も電話もないけれど」。まだ開国して間もない日本にやってきた外国船に乗る異国の女性との国際結婚という、なんとも珍しい題材を扱った楽曲である。
イギリスのロックバンドELOの「Mr.Blue Sky」という曲が元ネタとも言われているが、心地いいミディアムテンポのイントロから名曲の予感は十分。
ユニコーンの生み出すユーモアセンスと親近感のある言葉で構成された歌詞は、まるで小説のような物語性を含んでいる。そのストーリーを通じて、並べられたことば以上の情報を読み取ることを可能とする。
一般的に物語とは、「始まり」「中間」「終わり」の3部からなり、場面設定・登場人物・状況や障害が描かれる。物語の終わりラストシーンでは障害が頂点に達し、そして解決される。この短い曲の中にも、それらの要素が見事に表現されている。
江戸末期、文明開化の音がする頃に、黒船でやってきた女性と一目惚れをしてしまった僕。言葉もまともに通じない中、どうにかコミニケーションをはかりやがて恋に落ちた。多様性なんて言葉すら存在しないような時代だが、あらゆる障害を乗り越えた二人にとっては、この国の人たちはみな、手のひらで踊らされているようなものだ。
車も電話もない、変化も遅く不便で多様性のカケラもない時代、奇異の目で見られることを怖れなければ、枯れ木に花を咲かせることだってできる。
細かな描写ひとつひとつが、意味のある一本の線として繋がり物語を形成する。結果、記憶に深く残る一曲となった。
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