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20240121
Future Traveler - SHOW-GO
20年近く前に放送されていた、富士ゼロックスのTVCMを覚えているだろうか?そこで見た、AFRAというアーティストの衝撃は忘れられない。真っ黒な背景に立つ一人の男性が、マイク一本で様々な音を響かせるその驚異的なパフォーマンスは今でも忘れがたい。
当時はまだ珍しいヒューマンビートボックスというものを、日本全体に知らしめた歴史的なCMであったと思う。
その数年後、SHOW-GOというアーティストに出会った時に、同様の衝撃、いやそれ以上の感動を覚えた。
多くのビートボクサーは、その常人離れしたスキルで魅了するのが一般的だが、SHOW-GOのビートボックスは、口から発せられる音を美しいメロディとして操り、そこにボーカルを絡み合わせ、完成された一曲に仕立て上げる。
『Future Traveler』という曲は、流れるような美しい入りから始まり、リズムが転調すると、文字通りボーカルとビートボックスが見事に融合していく。そして後半では、驚異的なスキルがさらに展開されていく。
一般的に「ホモ・サピエンス」と呼ばれる種である、我々人間による活動は、指導型、編集型、消費型、追求型、そして創造型という5つの型に分けられるのではないかと考えることがある。
・指導型=他者を導き、リーダーシップやコンサルティングのような役割を果たすリーダータイプ
・編集型=世の中を俯瞰し、情報を整理して広める編集者タイプ
・消費型=受動的に物事を受け入れ、消費を続ける消費者タイプ
・追求型=特定の分野に深く没頭するオタクタイプ
・創造型=何か新しいものを自ら生み出すアーティストタイプ
一部共通点があるかもしれないが、ほとんどの人がどれか一つのタイプに当てはまるのではないだろうか。
歌手自体が創造的な職業であると言えるが、アーティストによってもタイプは異なると思う。
何か特定の表現を追求し続けるタイプや、常に流行を追い変化し続けるタイプ、シーンを牽引していくようなタイプまで様々あると思う。
その中で、SHOW-GOは究極の創造型アーティスト。彼は単一のマイクだけですべてを生み出してしまう。
しかし、いくつかのインタビューに目を通してみると、これほど高いスキルを持ちながらも、あくまで自然体なことが分かる。
ヒューマンビートボックスの世界大会に出場するほどの実力をもちながらも、バトルに固執するわけでもなく、自分の好きなことややりたいことに傾倒する。とことんまで追求したり、シーンを代表するということよりも、常に新しいものを創り出し続けることを選択しているように思う。
ほとんどのビートボクサーがスキルを磨き、表現手法を追求している中、彼だけは、うちから溢れてくる創造性を世に提示しているように思えてならない。
それはなにもビートボックスに限ったことではない。メロディでも、詞でも、映像でも、ファッションでも、音でもなんでもいい。
こうして創造された楽曲を、指導型の人はシーンを成熟させていくだろうし、追求型の人は進化させていくだろうし、編集型の人は分析し解読をこころみて、消費型の人が享受していく。
すべては創造型の人間が生み出したものから始まる。
そして、これまで見たことも聞いたこともないような独創的な表現を生み出すSHOW-GOのことを、みな畏敬の念を込めて「天才」と呼ぶんだろう。
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