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20240528
Facebook Friends - NIKI
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一説には、人が自分で把握できる意識はわずか1%に過ぎず、残りの99%は自覚できない領域にあるという。それを潜在意識と呼ぶ。
私たちの言葉や行動に現れるのは、その1%の表層意識にすぎない。本当に優れた楽曲とは、人間の意識の大半を占める潜在意識にまで届く音楽のことを言うのではないか。
インドネシア・ジャカルタ生まれのNIKIは、アジア系アーティストを中心にプロモーションを行う音楽レーベル「88Rising」に所属する主要アーティストの一人で、あの有名なコーチェラ・フェスティバルにも出演を果たしたほどの人気シンガーだ。
彼女の澄んだ歌声は、言葉を超えて、聴き手の潜在意識の奥深くへと想いを届ける。
学生時代、携帯電話を手にし、メールで誰とでもつながれるようになったとき、なんて簡単で画期的な時代になったのだろうと胸を躍らせた。やがてスマートフォンが普及し、アプリが次々と登場すると、メッセージをやり取りする手段は飛躍的に増えていった。電話番号に頼って連絡を取っていた時代は、いつしか遠い過去のものになった。
対面や口頭が中心だった頃、会話は目の前の一つに集中し、その場で完結していた。電話も、切れば終わる。
しかし今は、LINEやSlack、SNSなど複数のツールを使い分けながら、同時進行でいくつもの会話を抱えている。途中で止まったやり取りが、数日後に何事もなかったかのように再開することも珍しくない。
コミュニケーションの価値観は大きく変わった。軽く、速く、そして途切れやすくなった。ツールを通して交わされる無数のやり取りは、目にも見えず、耳にも届かない。それでも確かに存在している。
そんな"見えない会話"を描いたのが、『Facebook Friends』だ。そこにあるのは、おそらく男女の、今にも途切れてしまいそうな関係。再開させることはきっと簡単なはずなのに、その機会はもう二度と訪れないかもしれない。
いつでもつながれるはずの"Facebook Friends"でありながら。
But in the rare case that I do cross your mind.
(まれに私があなたの心を横切ることがある。)
I hope you know, you always cross mine.
(あなたはいつも私の心を横切っていることを知ってほしい。)
かつてなら遠い存在だったインドネシアという国。その一人の女性が歌う想いは、私たちの日常と何ひとつ変わらない。
もっとも手軽で、物理的距離すら意味をなさないはずの友人関係は、実は驚くほどはかない。それでも最後に、こう言い残す。
「We'll stay Facebook friends」と。
Facebookという象徴的な題材は、近いようで遠い二人の距離を映し出す。そして、まだそこにあるはずの、目に見えない会話を浮かび上がらせる。
多彩な音楽的バックグラウンドを持つNIKIの歌声によって、私たちの潜在意識に映像のように立ち上がるこの感覚を、ここに書き留めておきたい。









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