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20220803
『64 Bars』ft. JNKMN - JNKMN prod. by U.C.M
レッドブルが仕掛ける『64 BARS』。
キュレーターが選んだ数名のラッパーが、同じように選ばれたビートメイカーのオリジナルトラックで、「64小節」のラップをレコーディングし、 その模様をアンカット(一発撮り)の映像に収めるというもの。
レジェンド級のラッパーから、新進気鋭のラッパーまで、多種多様な面々がレコーディングブースの中で、唯一人書き溜めたリリックを吐き出していく。
「一発撮り」と聞いて思い浮かぶものといえば「THE FIRST TAKE」だろう。ここにHIP HOPのカウンターカルチャー的側面が見て取れる。1MC/1DJの切り詰められた極限状況で、1本のマイクがあれば十分と、ラッパーたちは己のスキルを披露していく。
その中でも、JNKMNの64 Barsは特に印象深いものだった。
かつてTHA BLUE HERBのBOSSは「泳ぎのへたくそな言葉と音を 完璧な響き目指して進ませる。」と歌ったが、JNKMNの圧巻のスキルは、隠語が散りばめらた数々の単語達を、完璧なフロウとして成立させてしまう。
パーティーチューンからハードコアまでラップにも様々なスタイルがあるが、ただ淡々と吐き出されていくこのスタイルが個人的に一番心に刺さる。いわゆるフック(サビ)をメインとする構成ではなく、64小節を延々とラップするこの企画にもばっちりとはまる。
システムの機能を表現する言葉に、「Core(中心的機能)」「Important(特徴的機能)」「Nice to Have(あると尚よし、という機能)」という言葉があり、あるとよい機能はない方がよいなんて言われているが、コアだけにまで削ぎ落とされたまさにリリシズムのアート作品。
小説も、コピーも、今書いているこの文章だって、いかに読みやすく心に残るように言葉を流れさせられるか。言葉のプロであり、フロウのプロであるラッパーの真髄ここにあり。
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