誰が付けたか、あの忌々しい奥歯を「親知らず」と名付けたセンス。その本当の意味を教えてくれるかのような優しく、切なくそして力強い一曲。

歌詞の中に象徴的に登場する「写真」は、１番では心細さも覚える狭い独り暮らしの部屋を、２番では子が家を出て行き広くなった部屋を、それぞれ言葉を発することなくただただ見守る。その対比がとてつもなく美しい。

「写真の中の二人の目がとても強いから
私がここにいる意味　わかった気がしたのだよ」

家族愛を的確に言い当てる生命力に溢れた詞。これほど感情をこみ上げさせる曲は他にはない。親を持ち、子を持つちょうど中間に位置する存在になったから余計に響くのだろう。歌詞の一言一句すべてを共感できる年齢は過ぎ、次は自分が「親」知らずの対象となる番。

思えば、自分の口の中を見せる相手などそうはいないはず。ずっと見守ってきた口の中に生えてくる最後の歯は、感謝と責任の象徴なのかもしれない。そんな感情が芽生えた事を親は知らないから「親知らず」。着飾らない等身大の言葉とセンスで、家族への愛を見事に描写した名曲中の名曲である。