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20230625
If I Can Dream - Elvis Presley
エルヴィス・プレスリーのライブカムバック番組、そのステージのために書かれ、クライマックスシーンにて初演されたのが『If I Can Dream』である。「I Have a Dream」のフレーズで人々の記憶に残る、キング牧師の演説に対するアンサーとも言われている。
正直なところ、この場で取り上げるには荷が重すぎるテーマとメッセージが込められた、偉大すぎる楽曲。それでも...ただただこの感動を伝えたい。
語りかけるような歌い出しから、力のこもった歌声は徐々に熱を帯びていく。この曲が演奏された番組『'68カムバック・スペシャル』は、表舞台から遠ざかっていたエルヴィスが、圧倒的なパフォーマンスを復活させた舞台でもある。
エルヴィスがどういう出自から音楽的成功を手にしたのか、その意味が、情熱的に歌う姿に重なって見えてくる。
人間はこの1万年もの間絶えず争い、殺し合ってきた。今、この成熟した現代でもそれは無くなってはいない。果たして、キング牧師の夢は叶ったのだろうか。
戦争や人種差別のような、人類全体が抱える巨大な問題だけではなく、ほんの目が届く自分の身の回りにすら、毎日悩みや不安は尽きないし、なくなりはしない。きっと誰だってそうだと思う。
陰は深ければ深いほど、光が強調される。
不安や悲しみに覆われてしまいそうになったとき、エルヴィスの歌う『If I Can Dream』が、光となって皆の前に現れる。そんな風に思う。
ところで、アーティストが歌う曲はいつ生まれたと言うのが正しいのだろうか。
作詞家、作曲家が思いついた時?レコーディングが完了した時?初めてライブで披露された時?...いや、それは聞く人がその曲に触れた時だ。
50年以上も昔、まだ生まれる前に歌われたものだとしても、決して遠い過去の名曲のひとつなんかではない。エルヴィスの力強くて、優雅で、優しさに溢れた歌声を耳にした瞬間、その音楽に命が宿る。
これから先、初めて耳にする人にとってもそうであるように。
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