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20201108
君ノ声 - 中村一義
日々生活をしていると、今の自分の人生には作者がいて、毎日、毎秒、その作者がせっせと描いているものなのではないかと思うことがある。漫画家という作者が、マンガの登場人物を描いているような錯覚を覚える。
そう思うと、君の眼=自分の物語を描く作者に映る僕を、僕は知れないし、漫画の中の世界に生きる僕の眼に映る君を、君=作者は知れない。
僕と君という、一人称と二人称の境目を曖昧にする歌詞が、まるで神と人間の関係を歌うかのように聞こえてくる。
ところで、こんな逸話を聞いたことがある。
第2次世界大戦中、ナチス・ドイツがスペインのゲルニカという街を爆撃した悲劇を、絵画として表現したパブロ・ピカソの「ゲルニカ」。この絵を見たドイツ軍将校が、ピカソに対し『この絵を描いたのはあなたか?』と問いつめると、『いや、あなたたちだ』と、ピカソは答えたという。
「出会う人は、その声かえす鏡のように。」
善行も悪行も、すべては君の眼に映り、僕の姿になる。
なぜか、「君ノ声」は恋心や愛情をうまく伝えられない恋愛の歌には受け取ることができず、哲学的なテーマを扱う曲として、自分の中に強く刻まれている。
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