20191219
お別れにむけて - スガシカオ
芸術は、それに接した人に対して、それぞれ固有の景色を想起させるものだと、どこかで耳にしたことがある。様々な情景や感情を誘起させたり、己の経験や感傷を揺さぶったりしながら、その作品が加わることで感情をさらに拡充させていくことが、音楽や絵画に込められた力なのかもしれない。
この曲を始めて聴いたのは小学校のころ、苦い思い出のあった学校を転校してまったく新しい環境に行くことになった時期だった。その頃はこの曲を聴いて、当時の友人との軋轢や謝罪できずに去った後悔やらを思い出していたのだけれど、久しぶりに聴いてみたら自分の心に響く単語やフレーズの箇所が変わっていて、違う場所で、同じように、寂しい気持ちになった。あの頃この曲を聴いていた自分と、今の自分が、居場所を奪い合うことなくひっそりと同じ曲のなかに共存しているような感覚を抱かせる。楽しくも嬉しくもない歌詞だけれど、妙に乾いたギターと、人を食ったような間延びしたフレーズが、寂しさや悲しさをかかえて歩けるかたちに整えてくれているのではないかと思う。
スガさんは今でこそポップでファンキーな曲調が多いけど昔はものすごい地味で暗くてコード進行だけごりごりのファンクな曲を作っていたので、その辺りはとても懐かしく聴いてしまった。
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