従来のHIP HOPのイメージといえば、ゴリゴリのBボーイが己の凄さ、悪さ、やばさを誇示するような内容のものなんじゃないだろうか。そんなステレオタイプのイメージとは真逆の屈折した心の闇を感じさせる楽曲。

冷たく、ノイズがかったサウンドが醸し出す空気感は、歪んだ思考と狂気じみた欲望を見事に炙り出すことに成功している。己を顕示するために取り繕ったようなものではなく、人間の内面をえぐるようなグロさを孕む。

江戸時代の絵師・伊藤若冲は『動植綵絵』と呼ばれる一連の絵画によって、狂気的なまでに細密な鶏を描いた。若冲は、生き物の内側に潜んでいる「神気」を感じ取ることができたと言われている。

尋常じゃない集中力と、対象物への熱すぎる視線のなせる業。

一歩踏み間違えるととんでもない犯罪にすらつながりかねない、誰しもが持ち得る人間の狂気を、この現代の文明の中に見事に表現した一曲。それは若冲の残した作品にだって通ずるものがある。