シンセサイザーを駆使したテクノサウンドのイメージが強いTM NETWORKの楽曲の中において、フォーク色も感じられる名曲「Still Love Her」。アニメ・シティーハンターのエンディングテーマとして有名な一曲である。

かの『Get Wild』でも取り入れられたアイデアのひとつが、アニメのエンディングシーンに重なるように静かに始まるイントロ。アニメと一体化したような演出が当時の記憶として深く刻まれている。

曲の構成を分解していると...
A-1、B-1、A-1'、A-2、B-2、A-2'、A-3''
のように、Aメロとサビがかなり似通っている。

全小節がサビのような秀逸なメロディになっている。頭に残るメロディと、そこに乗る文字数は、誰もが気持ちよく歌えるよう計算し尽くされているかのよう。

また歌詞においては「静と動」の対比がこの上なく美しい。

静＝過去の記憶、定住を決めた街、僕のこころ
動＝毎日の生活、季節、二階建てのバス

別れの心情描写を「静と動」の対比で見事に表現している。住む町が変わろうと季節が変わろうと、時が止まったままのこころは「静」。その目の前を象徴的に過ぎ去っていく二階建てのバスが「動」。どちらも穏やかで、悪意も悲哀も後悔もなく、ただただすっと心に沁み入る。それはまるでひとつの絵画作品。いつまでも鑑賞していたい気分にさせられる。