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20200319
翳りゆく部屋 - 荒井由実
Aメロ→Bメロ→サビ、Aメロ→サビ、サビと曲が進行するにつれサビへの展開を短くすることで、よりメッセージの強弱がつくように計算された構成が秀逸。そこには「死」という究極の選択をもってしても叶わない残酷な運命が描かれている。
壮大なスケールで作られた音と、抑揚を押さえた歌声。どんな人生を送れば、ここにたどり着けるのかとただただ圧倒されるばかりである。
キーになるのは「光」。夕陽、宵闇、ランプ...すべて果無く消えかかった明かりを連想させ、それが「戻らない輝き」へとつながっていく。歌詞のいずれにも登場人物から発せられた言葉はなく、描写のみで進行していく。声を上げたくなるような押さえきれない感情に溢れているのに、何も言うことができないという気持ちを強く印象づけさせる。
当たり前にあったものがなくなることと、あって欲しいと願ったものがないと確定すること...。そんな自分の死よりも訪れてほしくなかった瞬間を歌った歌なのだろう。日本の音楽史に残る名曲であることは間違いない。
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