ビジネスの世界にいると、論理的思考というものが常に求められ、説明できない感情論や再現性のない思いつきなどは通用することがない。なぜそう思うのかを突き詰め、仮説を立て、ひとつひとつ定量的・定性的データに基づいて検証し続けなければいけない。

WHRMのライティングでも、なぜこの曲が好きなのかを論理的に言語化することをひとつの目的にしている。

しかし、時に芸術というのは言葉では説明できない感情に突き動かされるものである。

『人には感応力がある。愛する人が痛み苦しむのを見れば我身にも同じ痛みを感じるものだ。多忙を極め雑事に追われていると忘れがちだが、自然に近い生き方をしている人ほど、この感覚を豊かに備えている。そして芸術も、この感応力を基礎としているのである。』

戦国時代、一世代であの狩野派に挑んだ長谷川等伯の一生を書いた歴史小説「等伯」の中で描かれている一場面である。

日々、ビジネスにおけるプレッシャーを感じ続けていると、昔のような自然体で音楽と向き合う機会はなくなり、感応力はとどんどん衰えてしまう。

奇しくも2021年、何かとネガティブな話題に振り回されることになったバンド名だが、この曲にはそんな世論なんかぶっ壊すパワーが溢れていた。イントロから流れるギター音。ほとんど聞き取れないようなシャウト。

何の脈略もなく聞く事になったわけだが、その瞬間、感応力が目覚めた。それは、失いかけていた感情を取り戻したようだった。