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馬の岬

2008/11/30 [13:15]

江戸時代、宮崎の高鍋藩は、軍用馬の調達の為に県南部一帯に牧場を作り、都井岬(といみさき)にもその一つがありました。


牧場といっても、現在のサラブレッド馬のそれとは違い、
至って粗放な飼い方で、馬たちはほとんど勝手に食べて、勝手に生き、勝手に殖えていました。
その中から随時元気な奴を引っ張って軍用馬にしていたわけですが、
時代は代わり、藩はなくなり、都井岬の馬は、
同じような粗放な飼い方で、地元の民の農耕用の馬の供給元になりました。


そして戦争にも農耕にも馬は必要なくなった現在、
そのまま半ば放っておかれた都井岬の馬は、
(元々そうだったとも言えるが)ただ、普通に暮らしています。
都井岬。つまりここは「野生」の馬に会える岬。


草原と森と崖からなる、自転車であらかた回るのに1、2時間はかかりそうなわりと広いエリアに、
数頭の群れごとに分かれた馬たちが、
伸び伸びと草をはみ、至るところにオシッコウンコをし、たまに駈けています。
ムチなど打たれないで自分の意志で丘を駈ける馬の姿は、実に幸せそうでした。


ファッヒヒイーーーンー!
僕を驚かせて目の前の一頭が鳴くと、
呼応するんですね、遠くから幾つか鳴き声が聞こえてきました。
会話するんならすればいいのに、
投げ掛けっぱなしで、相手が鳴いても気にしないで、黙々と彼は草をはんでいました。


…自由!



猿の島

2008/11/28 [22:22]

イモを海水で洗って食べる「文化人猿」が生息する


ツーリングマップル九州に小ーさく記されているこの文句に惹かれて
幸島(こうじま)へやってきたのは、もう夕方でした。
海岸の砂浜から目と鼻の先の距離に浮かぶ無人島。
あと100年もあれば陸繋島になりそうな感じですが、
残念ながら今は歩いて渡ることは出来ません。
城壁を思わせる岩肌と黒い森、
おかげで人間にも他の猿にも邪魔されず、
100頭の猿は独自の進化の旅を続けてきたわけですね。


「イモを海水で洗って食べるというワザを、彼らは世代交代しながら、群れの内部に伝えている。それは人間だけが持つという「文化」に他ならない。」
ということで、研究対象として、たいへん貴重である。
ということなんですが…


砂浜に佇んでいたお爺さんに訊くと、
(僕にはお爺さんの宮崎弁が半分くらいしか分からなかったので、話を僕が解釈したところによると)
この島の猿が一部で有名になり、
イモを洗う姿を見ようと、人間が船からイモを投げ込んだりしすぎた結果、
島の自然に対して100頭で安定するはずの猿の頭数が増えすぎ、
それによって猿の社会が混乱して、
現在生きている連中はイモ洗いをしない。んだそうです。


なんてことだ…。
洗えない猿はただの猿だ。
俺たち、どうしたらいいすか…宮崎駿先生。


「人間と自然との共生」について考える振りをしつつ、
僕はその気持ちのいい砂浜を本日の宿に決め、
流木をあつめて夜は焚き火をしました。
黒い森に阻まれて一切姿は見えませんが、
騒ぐ猿の声だけが、遊んでいるのか喧嘩しているのか、
この火について何事か吠えているのではなかろうが、
向こうからたまに聞こえてきます。


comment (2)


再び、使者になる

2008/11/26 [23:00]

素人に、人さがしは楽じゃない。


OMちゃんの、宮崎県のもう一軒の恩人の方のお宅を探索します。
住所は聞いているので、地図で見て見当をつけ、
後は、道行く人に聞いて探すのですが、なかなかたどり着けません。
国道沿いの家だと思うんだけどなぁ…。
と思いながらうろついていると、簡易郵便局を発見したので、ここで聞いてみることにします。
局員さんは、超詳細な地図で調べてくれました。(むかし宅配寿司屋でバイトしてたときに使ってた、一軒一軒の名前入りのヤツだった!懐かしい…)
しかし残念ながら、見つかりません。
局員さんは恐縮しつつ、
「本局の方に行って聞いてみて下さい。あちらは配達もしてるので分かるはず。」
とのこと。
で、行ってみると、
「たぶんあの辺りなんであそこのガソリンスタンドで聞いて下さい」
と、意外と素っ気なく言われました。
ガソスタの辺りっていうのは最初から分かってるんだけどなあ…とぼやきながらも、
言われた通りに行ってみたのが、正解でした。


ガソリンスタンドの奥さんが、たまたま目指すYさんの奥さんと友達で、
自宅はもとより、「今たぶん留守だから」ということで、
Yさんの奥さんのやっている美容室まで、
軽トラで僕を案内してくれました。(感謝!)


そうしてたどり着いた「るり美容室」。
奥さんは当然、最初びっくり仰天してましたが、
OMちゃんの手紙とこの使者の頑張り(?)を、非常に、喜んでくれました!
色々ごちそうさまでした。
いやあ、来てよかったな。
自分が楽しむためのこの企画だけど、相手も喜んでくれるじゃないか。


詳しいエピソードは省略しますが、
道を聞いたのがきっかけで、OMちゃんとYさん夫婦は親しくなり、
泊めてもらった恩を(あとバーベキューの恩も)OMちゃんはずっと抱いていくわけですが、
奥さんは言うのです。
「なにか、こちらの方が、感動させてもらってね…」


旅人が恩人に感謝をする。
恩人の方でも旅人に、それに似た優しい暖かい気持ちを持つ。
偶然がつないだ、旅人と恩人の間の美しい絆のようなもの。
奥さんの言葉や表情に、そんなものを感じました。
それは例えば、結婚前の男女の「愛」より、よっぽど尊い気がします。


仕事を終え、僕はまたしても軽くなったペダルを回して、南へ南へと駒を進めました。
沿道のハイビスカスがきれいでした。(写真)



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