眼下に現れた「あらぎ島」の造形に見とれて、僕は石と化してしまった。
紀の川を下り、和歌山市に到着。
そこから北へ舵を切り、大阪港へ行くつもりが、
「あらぎ島」の情報を得て、どうしても行きたくなり、
九州がまた遠のくが、さらに寄り道をすることになりました。
あらぎ島…
和歌山県唯一の「棚田百選」選出の棚田で、
有田から有田川を50キロ程さかのぼった山中にある。
「どこ行くんな?こんな山ん中へ(笑)。何も無かろう。」
だいたい中間地点の、明恵の道の駅で、地元のおじさんに訊かれました。
「<あらぎ島>に…」
「島…?この先に、島?」
「棚田の名前なんです。あらぎ島」
「……」
「清水っす。清水ってとこに行きます。」
「ああ清水な!まだ、だいぶあるで!まあ頑張りぃや!」
おじさんは「あらぎ島」を知らなかった。
そして口下手な僕が、何ら説明出来ないまま、おじさんは明るく去っていきました。
しかし、そう、山中に確かに島があるんです。
有田川の上中流は、河岸段丘もほとんど作らずに、
深い谷をとにかく削りながら流れています。
少ない、というか、無いかのような僅かな平地に、
田畑が拓かれ、小さな山村がぽつぽつとあります。
江戸時代前期、清水の村で、
人々は、大きく湾曲した有田川の内側の円形の土地をならして、放射状の田んぼにしました。
水に囲まれた円い棚田。これが「あらぎ島」です。
もちろん今も現役で耕作が続けられています。
写真の通り、何とも言えない、不思議な造形美。
うー………………………ワッ!
棚田好きにはたまりません。
コロッセオのようなピラミッドのような…
それがマチュピチュの場所に在るような…
しかし神殿でも陵墓でもなく、
ただの田んぼなのである!
米を得るためだけに作られたである。
僕は、一日の疲れを忘れ、思考力も失って、
たまらんたまらん…
と、うわごとを言いまくっていました。
円形闘技場の真ん中を貫く道を、
お爺さん剣闘士のカブが一台ポロロと走る。。。
たまらんわたまらんわ…