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猫とあそんだ

2008/11/17 [08:18]

国宝の大塔がある根来寺の山門には、ここをねぐらにする猫が数匹。


動物としての猫が好きな人のなかには、
飼い猫より野良猫が好きだという人が多い気がします。
僕もその一人です。
若い野良猫の、生きるために日夜闘っている感じも好きだし、
老いた野良猫の「もういいよ」っていう雰囲気はもっと好きです。
食べること以外に興味がなさそうに振る舞い、
それでいて高尚なことを考えていそうに見える。
無駄な努力なのに、表情から胸のうちを探ってしまいます。


根来寺の猫たちはとくに、
参拝客は攻撃してこないとたかをくくっているのか警戒心が薄く、ぼけっとしていて、
汚いけど可愛かった。
目の前で舟を漕いで寝てました。


猫の一日。
その足で、今度は貴志駅のたま駅長に会いにいく。


たま駅長は和歌山電鉄貴志川線の終着駅、貴志駅の駅長さんで、猫です。
一つ前のなんとか駅まで自転車で行き、ひと駅だけ電車に乗ることで
廃線の危機を救うべく立ち上がった、たま駅長の志に報います。
さぞ乗客は少ないかと思いきや、結構混んでいました。
初めてかも(?)の電車旅を楽しむ余裕もなく、
貴志駅にあっという間に到着し、
瞬時に判明したことには、
一般客はほんの少しで、大半は僕と同じくたま駅長目当てで来ていたのでした。
さすがは、アイドル猫だ。


写真の通り、改札口で勤務中のたま駅長は、
ミーコ助役、ちび助役とともに、
改札はせずにショウケースのなかで背中を舐めていました。
黒・白・茶色、きれいな三毛の毛並みは、ツヤッ艶!
僕の170円も、たま駅長の栄養価の高い食事代に当てられるというわけですね。
美味しいものを食べて、明日も元気に、ストレスに負けないで勤務するんだよ。たま。


アイドルか野良か、あなたなら、どっちになりたいですか?



高野山

2008/11/15 [23:57]

高野山金剛峯寺、奥ノ院に、大師さまは今も生きている。


四国八十八ヵ所巡りを終えたお遍路は、
無事に巡礼を終えられたお礼参りとして、
弘法大師さまに会いに、高野山に登るならわしです。


高野山へは、南海電車も走っていますが、
もちろん自転車で、汗を流して登ります。
麓ちかくのガソリンスタンド「昭和シェル九度山SS、大谷石油店」さんにお願いして、
ほとんどの荷物を置かせてもらい、
空荷で快走しました。
空気はもう冷たくて、標高が高くなるにつれ、吐く息も白くなっていきます。
そして山々の紅葉がとても美しい!
険しい山に挑むような気持ちで走り始めたはずが、
やがて、逆に霊場に引き込まれるような、
迎えられるかのような気持ちになっていました。
八十八の寺のなかにも山岳寺院は幾つもあったけど、
こういう感覚は全く初めてです。


名前の通り高野山(高野町)は、
「高い山の上の平野」で、そこに、金剛峯寺を中心に、沢山の寺院がひしめいています。
(写真は高野山入り口にそびえる大門。左にちっさく門をくぐる人が見えます。)
日本にもこんな所があったのか、と思わせるような、そこは宗教都市でした。


金剛峯寺に参拝してから、いよいよ奥ノ院に向かいます。
延々と続く参道には、
並み居る杉の巨木と、真言宗に帰依したらしい有名無名の人物の数えきれないお墓と卒塔婆。


なんて場所だ…!
霊場のなかの霊場。
この上ない静謐が支配する、永遠の帝国。


そして奥ノ院に着きました。
大師さまの姿も声も僕には分からなかったけど、
確かにそこにいる大師さまに、手を合わせ目を瞑り、
僕は無心に語り掛け、報告とお礼をしました。
ありがとうございました。無事に巡礼を終え、ここに迎えて頂きました。得がたい何かが得られた気がします。


…伝え切れません。
嗚呼、僕は泣く泣く筆を投げ捨てる。
やってください。四国八十八ヵ所巡礼。



ボヘミアン・ラプソディ

2008/11/14 [22:36]

凍える寒さに加えて小雨も降ってきた。風邪で涙目である。鼻水も止まらない。


奈良県大淀町、夕闇せまるころ、
留まるべきだった道の駅をスルーするという、ちょっとした判断のミスから、
僕は「本日の宿さがし」に苦戦していた。


道の駅からだいぶ走り続けて、
暗くなってからたどり着いた小さな町営の入浴施設で、
頼んで軒下にテントを張らしてもらおうと、
事務室に向かい、お願いしてみる。
応対してくれた大淀町の岸谷五郎さんは、優しく訴えを聞いてくれ、
僕は内心、「何とかなりそう」の気配を感じていた。
見回りにくるという警備会社にも電話連絡してくれそうである。
しかし
「んー、構へんのやけど…」
と、いささか歯切れが悪い。
というのも、事務室にはもう一人職員がいて、
後ろでやり取りを聞いている、上役らしい彼女に最終判断を任せているらしいのである。
五郎さんと僕の視線が、大淀町の奈美悦子さんの口元に集中した。


「あそこに道の駅もあるし」


悦子さんは正しい。くれぐれも、悦子は正しい。
でも、寒いんです…。道の駅、だいぶ遠いです…。
彼女の氷の一言に世の中の厳しさを知り、
次をさがすことにした。



道を聞いた大淀町の夏八木勲さんの推薦は、
「地域の公民館」だった。
「あそこは誰か死んだときの通夜や葬式ぐらいでしか使ってないしね。屋根もあるし。」
公民館の類にテントを張ったことはないが、
「公民館」の文字を想起すると、
それは「みんなの建物」という意味である。
みんなのものはオレのものでもある!


たぶん間違った解釈で自分を勇気付けて、
行ってみると、野宿ポイントとしてなかなか好条件である。
よし、今夜はここをお借りしよう。
安堵してチキンカツを食べていたら
どこからともなく樹木希林さんがやってきて、こう言った。
「今日ここ使うよ。一昼夜使うよ。」


誰か死んだらしい。



公民館をあとにして、次に進みながら、
寒くなる一方のツライ状況で、
涙目の僕は逆に笑けてきた。
旅が長くなり、こういう失策をあまりしなくなってきた僕にとって、
この手の試練は久しぶりで、
なんか楽しくなってきたのである。


そして、やがて流れ着いた思いがけない場所で、
「本日の宿さがし」は決着した。
暗くて最初よく分からなかったのだが、


そこは「墓地の東屋」だった。
誰も来ない、来るわけがない、暗闇と静寂の夜。
案外いい夜だ。


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