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知林ヶ島 終着駅

2009/01/22 [23:54]

落石岬、霧多布岬、エンルム岬、函館、男鹿半島、江ノ島、観音崎、潮岬、…


日本列島北から南、全国の陸繋島を回ってきました。
その最期を飾るのは知林ヶ島(ちりんがしま)であります。


南の島々へ渡るフェリーが出る鹿児島市を一旦通り過ぎ、
薩摩半島の先端、温泉で有名な指宿市に入ります。
しかし僕の目的の一番は、浜辺の砂蒸し風呂ではなく
潮が引いたときだけ砂州が道状に現れ、渡ることができるという、この浪漫あふれる無人島なのでした。


旅に出る以前からここについては知っていて、
日本縦断をもしやるなら、必ず行くことになるだろう、と
強くイメージしていた場所でした。
陸繋島を「つなぐ」旅。というサブテーマも、発想はここから生まれていたわけであります。


たどり着いた。長かった…。
快晴の冬の空は、夏空の青さとはまた違った清々しさがあります。
海も空に呼応して見事に青い。
残念ながら今の時期、知林ヶ島は、干潮時も、渡れるほどの砂州は出現しないようで、
渡ることは諦めて、こちら側の魚見岳215Mに登って、その頂から島を眺望します。
歩いて30分、うっそうとした森を抜けて、突如展けた視界に、
島は圧倒的な存在感で鎮座していました。


渡れそうでは到底ないが「道」も見えます。
両側から迫る波が、未だ浅く沈む砂州を淡く浮き上がらせて呼吸する…
「こんな美しいものは見たことがない」心境に、そう、僕もなりました。


…山頂の広場の芝生にどのくらい座っていただろうか?
青空に浮かぶ自由な凧のように風に遊ぶ、うごかない知林ヶ島。
青い鳥の終着駅には、
長い旅路の全てを肯定してくれるような、
静かな、感動を越える感動が待っていました。
そしてつくづく思います。
自然のやることは変化に富んでいて、
そして気が利いているから好きだ!



湯けむりが見えれば

2009/01/21 [08:46]

今更ながら、冬は自転車の旅に適した季節では決してありません。


一日中外にいるのは、やっぱり寒いです。
仮に暖房器具など無かったとしても「屋内」というのがそれだけでどれほど暖かいか、
身にもって感じています。
太陽が出ていればまだましですが、曇りや、突然の雨など本当に恐ろしい。
日が沈むのも、もの悲しいというより、ちょっと怖いくらいだったりします。


夜は、テントの中で寝袋を二重に、衣服も二重三重に着て、カイロを足先に放り込み、エアマットにもMAXに空気を吹き込んで、さらに防災用毛布を一枚かぶり、ミイラのようにぐるぐる巻きになって眠るのですが、
それでも寒いです。
眠りながらにして冷えで脚がつった日も幾度か。
お願いだ早く朝が来てくれ。太陽!はやく!と痛切に願う夜、いっこうに進まない時計。
夜をしのぐためのアイテムがどんどん増えて、夏場に比べて荷物も倍くらいになっていて、走りが重い。
日照時間そのものが短くて行動に制約も大きいのに、寒さとの闘いに忙殺される。
本当に、冬は自転車の旅には向かない季節です。


しかし、であります。
この真冬にまで旅を続けていて良かった。とも思うのです。
他でもない、温泉に浸かって骨の髄まで冷えきった体を温めているときに!
(ふうわあぁぁぁぁぁあああったかいーーーー!!)
今日この温泉に入った全ての人のなかで、
オレが最もこの温泉を美味しく味わっている!という強烈な自負?など感じつつ、
半身浴主体で体を芯まで温めます。


今日入ったのは、鹿児島県は薩摩川内市の、市比野温泉「下の湯」。
入浴料金はワンコイン、100円です。
アルカリ性のヌルヌル系の湯は、勿論掛け流しで新鮮。
施設は古いが湯は新しい。というわけです。
昔ながらの共同浴場に、毎日通う地元のおじさんおばさんの挨拶や世間話が明るく飛び交い、
僕は「湯は人々を明るく素直にするんだ」という結論に至りました。
温泉に関しては、この旅の過程で、おのずと「舌が肥えて」しまっている僕ですが、泉質や諸々を含めて、ここは実に良い湯でした。



鶴の平野

2009/01/19 [18:11]

鶴は旅をする。国境をまたぎ海を越え数千キロ、鹿児島県は出水平野に、今年も1万羽の鶴が越冬にきています。


中国やモンゴルやロシアで夏を過ごし、
冬になると数羽ずつ隊列を組んで順次、朝鮮半島や日本へ渡る。
旅とともにある彼らの一生、
渡り鳥の当たり前の行動様式に、
幼稚かもしれませんが、憧れを禁じえません。


鶴の越冬地は、開発が進んだなかで、いまや事実上日本にはたった一ヶ所、ここ出水平野しか残されていないそうです。
八代で教えてもらった鶴情報をたよりに、出水市に差し掛かると、
居る、居る、普通に居る!
朝の田んぼで二番穂をついばみ、たたずむ鶴たちの影、
首を伸ばした独特のスタイルで宙を舞う影、
愛らしさいっぱいです。


  渡る鳥もひと息つけや湯の街ぞ


10月、大分は別府温泉のときに作ってみた句です。
…無事に越冬地にたどり着いてよかった。せいぜい心安らかに春を待ちなさい。


ところで、別府鉄輪温泉には、各温泉施設に「投句箱」と紙とエンピツが用意されていて、
その年の最優秀作は何と石碑にして街のどこかに建ててくれる、ということで
それで作って投句してみたのです、
そうしたら「佳作」を頂きました。うれしい!
まあ最優秀賞と違って大量に選ばれていましたが。。。


さて、鶴を間近で見たくて、わざとよそ見しつつ、そろりそろりと歩いて接近していくのですが、
ある一定の距離になってくると、向こうもさり気なく歩いて離れていき、きっちり間合いを保ちます。
見てないようで見てる。
羽を休めていても決して警戒はゆるめていない、これぞ野生、ですね。


  しんがりを出迎え鶴は背を向ける



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