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大島紬の奇跡

2009/02/06 [23:59]

大島紬(おおしまつむぎ)は奄美大島の伝統工芸品です。


こちらに来るまで、まったくその存在も知りませんでしたが、
島を旅しながら、目で見て耳で聞いて、この絹織物が次第に気になっていきました。
なので、いよいよ沖縄行きのフェリーに乗り込むため中心市街地の名瀬に帰ってきて、
僕は奄美の最終日を、大島紬を扱うお店巡りをして過ごすことにしました。


大島紬は、江戸時代初期から織られ、高い技術とその美しさから、和服の素材として最高の地位を誇ってきたといいます。
原料は絹100%、染料には島に自生する草木と泥(!)を使い、
気の遠くなる何百の工程を経て、機械では出すことができない独特の風合いを持つ絹織物を、
島の職人さんがすべて手作業で作っています。
(写真は反物の切れ端を用いて作った眼鏡ケース。細かい図柄に、渋い色味がいいです。)


深い色調は、西洋の鮮やかなドレスとは対極にあるかのよう。
このじんわりと深くしみ渡るような色や質感…艶やかです。
見れば見るほど、日本の女は美しい。
高くて到底手が出せない大島紬の着物を見て回りながら、
僕はそれを作り、それを着てきた
奄美の、日本の、美しい女性たちを脳裏に描いて、
感心しながら、追い掛けました。



ホノホシの旋律

2009/02/05 [23:56]

ほとんど集落もまばらな奄美大島の南東端に位置する、ある浦に「ホノホシ海岸」はありました。


名前の奇妙さもさることながら、
砂浜っぽい雰囲気なのに一面に敷き詰められたのが砂でなく、丸い石の数々で、面白いです。(写真)
それは河原の石のよう。でも目の前に広がるのは紛れもなく海なのです。


ざっぱーーーーーっ
シャー…(カラカラカラ…)


波が寄せるときの音は普通の砂浜と同じですが、
返すほうの波は、水の音に加えて、無数の石を巻き込むので、石同士が触れ合って何とも心地よい音を立てます。
生まれてはじめて聞くこの音楽が猛烈に気に入って、
一晩中これを聞いていたくなり、まだ少し日は高かったものの、ここを本日の宿に決めました。


「こんないいとこは日本中さがしてもなかなか無いよ」
そう言って地元のおじさんが胸を張るので、
砂浜キャンプは特に大得意としながら北海道から一年半旅してきたことは何となく伏せつつ、
僕もここを絶賛して、おじさんと仲良く話しました。


食事やテントの設営、荷物の整理云々のルーティンワークをさっさと済まして、
暗くなるのと同時くらいには横になりました。
そしてホノホシの旋律に身を浸し、
たまに外に出ては満月に近い月を仰いで、
これが美しい夜でなくて何であろう!
これが旅の妙味でなくて何であろう!
と、満ち足りた思いを味わいました。


目をつむると音楽はうごきだす。
今こそ言い切ろう、
すべて音楽の原点は、寄せては返す波音にある。



加計呂麻島

2009/02/04 [23:49]

奄美大島南部の中心地、瀬戸内町古仁屋(こにや)にやってきました。


古仁屋図書館に、真っ先に向かいます。
というのは、佐賀県の伊万里でお世話になった、日本画家の小林さんの寄贈した絵画がここに飾られていると聞いていたからです。


97年にフランスの美術展で賞をとったという「晩秋洸」。
稲刈り後の田んぼにたたずむ白サギの絵は、
気品ある美しい絵で、絵画を解さないはずの僕も、見ていて心安らぎました。
何故ここに寄贈されているかというと、
奄美大島瀬戸内町は小林さんの奥さんの出身地だからです。
というわけで、絵を見た後は、
大島海峡を挟んですぐ対岸に浮かぶ加計呂麻島に渡り、
連絡していた、奥さんの甥ごさんの経営する民宿「来々夏(ココナッツ)ハウス」に向かいました。


川のように透明な水の大島海峡を、フェリー「かけろま」は、20分で結びます。
加計呂麻島、生間港に着き、民宿のある渡連(どれん)の集落に向かう道すがら、
チワワを連れた女性を追い抜く形になり、
目が合ったので挨拶をしました。
「こんにちはー」
「あ、こんにちは!」
こちらは何しろ自転車なので、あっという間に抜いて去っていこうとすると、女性が、


「もうすぐですよー。」


「……!?」
つまり女性は来々夏ハウスの女将さんで、
僕のいでたちから、僕が今日の来客であることを瞬時に気付いてくれたのでした。


玄関の満開のブーゲンビリアに迎えられて到着した来々夏ハウスは、
目の前の渡連ビーチまで何と徒歩5秒!
暖かい奄美とはいえ、さすがにまだ泳ぐことはできませんでしたが、
澄んだ海が見渡せる広々した部屋に泊めて頂き、
ここで釣れた魚料理の食事(地魚の刺身、アジのまるごとの唐揚げ、伊勢エビの味噌汁…)もおいしくて、
笑いが止まりませんでした。
そしてとうとう宿泊代は受け取って頂けませんでした。
恐縮恐縮、感謝感謝です。


「いつか、また来ます!今度は夏に」
まるで社交辞令かのような120%本気の台詞が、
翌朝の出発時に口をついて出ました。
生間港に戻る帰り道、日は射しているのに雨が降りだし、
程なくして海峡を渡す半円の虹が現れ、
足を止めて僕はそれに見入りました。


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